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当院で可能な腹腔鏡手術
外傷性横隔膜ヘルニア陥頓修復術
外傷性横隔膜ヘルニア陥頓修復術の実際
この患者さまは40代の男性で、4年前にトラックと正面衝突するという大事故に遭い、大動脈を損傷、胸を開けて大動脈を人工血管に置き換える手術を受けました。
こちらに関しては無事に回復しましたが、その後1年したころから、食事をするとみぞおちあたりが痛んだり、違和感を感じたりすることがあったそうです。
ところがとうとう食事を摂ると嘔吐してしまい、食事がほとんど摂れなくなってしまいました。近くの病院で検査を受け“食道裂孔ヘルニア”と診断され内服薬を処方されましたが一向に改善せず当院を受診されました

胸のレントゲンを撮ると、左の横隔膜が通常よりかなり上昇しており、その下には大きく膨らんだ胃の中の空気が見られました。
胸腹部CT検査をしてみるとより状況は明らかになり、胃がまるで逆立ちをするように左横隔膜から胸の中に飛び出しているのがわかりました。
バリウム検査でも同様の結果で、胃が逆立ちをしながら胸の中に飛び出しているため、途中から先(十二指腸方向)へは全く流れませんでした。

4年前の事故で胸を強く圧迫されたことにより、胸の中の圧力が急激に上がり、横隔膜(胸と腹を境界する筋肉の膜)が裂けていたのでしょう。
一気に裂けるとすぐに症状がでますが、当初はほんの少しの裂け目だったのが、時間をかけて徐々に大きくなり、ついには胃が飛び出してしまったと考えられました。
これを外傷性横隔膜ヘルニアといいます。
以前は胸を開いたり、お腹を大きく開けて手術をしていましたが、最近では腹腔鏡で手術する例も増えてきました。
当院ではさらに低侵襲な治療を目指し、単孔式(1ポート追加)腹腔鏡下修復術を行うことにしました。
今回は裂けた部分を縫い合わせる作業があるため、5mmの傷を余分につけることにしています。手術の様子は次のような感じです。

横隔膜にあいた穴から胃を引き出します。
胃を全て引き出すとぽっかりと空いた穴がよく分かります。
これを縫い合わせていきます。
どうですか。さっきまで空いていた穴がきっちりと塞がりました。
横隔膜は常に腹圧がかかり、さらには呼吸とともに動いています。
縫い合わせた部位が破綻しないように人工の布で更に補強しました。
術後経過は良好で、翌日には食事を始めて術後3日目には元気に退院されました。
もちろん、手術前にあった症状は消えてなくなり、退院後も再発の兆候は全くありません。



退院時のお臍の傷です(術後3日目)
お臍の傷の大きさは1円玉と同じです。お腹の左側(写真の右側)に追加で加えた5mmの傷()があります。
いずれも1ヶ月もするとほとんど分からない状態になります。