当院は東京都板橋区にあるIMSグループの病院です。厚生労働省臨床研修指定病院 日本医療機能評価機構認定病院 東京都がん診療連携協力病院 English 中文

IMSグループ医療法人社団明芳会 板橋中央総合病院 / 板橋中央総合病院附属 板橋セントラルクリニック

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診療科のご案内

腎臓内科

詳細

診療科紹介

当院腎臓内科の担当する疾患は慢性腎臓病CKD、急性腎臓病、水電解質異常(カリウムやカルシウム異常など)、二次性高血圧、透析患者の種々の合併症などです。とくにCKDの原因疾患である慢性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、膠原病による腎炎は腎生検(年間40件)による病理診断を基礎とした治療ガイドラインを遵守して行っています。
糖尿病性腎症も診療します。末期腎不全になってしまった場合は血液透析の開始(年間30-50件)や腎臓移植を腎臓外科とともに行っています。また遺伝疾患で腎臓だけでなく全身に種々の異常をきたす常染色体優勢遺伝多発性のう胞腎ADPKDのトルバプタンによる治療も行っています。

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当院での専門的治療

外来担当医表

腎臓内科よりお知らせ
  • 腎臓内科では予約制を導入しております。詳細につきましてはご連絡ください。
午前 午後
受付時間 初診 8:00~11:00
再診 8:00~11:30
初診 12:40~16:00
再診 12:40~16:30
診療時間 9:00~ 14:00~

診療科や担当医により診療時間が異なる場合があります。
下記の担当医表をご確認ください。

担当医表(腎臓内科)

非常勤医師

令和6年10月1日現在

午前 安野 江美 久田 莉奈 星本 相法 萩原 壮 原野 真紀子 村田 莉里子
午後 金子 修三 今井 惠理 金子 修三

医師の紹介

常勤医師
腎臓内科主任部長 金子 修三
腎臓内科主任部長 金子 修三
専門分野
  • 腎臓内科
専門医認定/資格等
  • 医学博士
  • 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医・指導医・評議員
  • 日本透析医学会透析専門医・指導医
  • 日本アフェレシス学会血漿交換専門医
  • 日本移植学会移植認定医
  • 日本腎代替療法医療専門職推進協会腎代替療法専門指導士
  • 厚生労働省認定難病指定医
  • 東京都身体障害者福祉法指定医(腎臓機能障害の診断)
医長 萩原 壮
腎臓内科医長 萩原 壮
専門分野
  • 腎臓内科
専門医認定/資格等
  • 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
  • 日本透析医学会透析専門医
  • 日本腎代替療法医療専門職推進協会腎代替療法専門指導士
  • 東京都身体障害者福祉法指定医(腎臓機能障害の診断)
医長 安野 江美
腎臓内科医長 安野 江美
専門分野
  • 腎臓内科
専門医認定/資格等
  • 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
  • 日本透析医学会透析専門医・指導医
  • 日本腹膜透析医学会認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 東京都身体障害者福祉法指定医(腎臓機能障害の診断)
  • 厚生労働省認定難病指定医
透析室長 今井 惠理
透析室長 今井 惠理
専門分野
  • 腎臓内科
専門医認定/資格等
  • 医学博士
  • 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
  • 日本透析医学会透析専門医・指導医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医・指導医
  • 日本急性血液浄化学会認定指導医
  • 日本腎代替療法医療専門職推進協会腎代替療法専門指導士
  • 厚生労働省認定難病指定医
  • 東京都身体障害者福祉法指定医(腎臓機能障害の診断)
  • 日本医師会認定産業医
医員 原野 真紀子
医員 原野 真紀子
専門分野
  • 腎臓内科
専門医認定/資格等
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本透析医学会透析専門医
医員 久田 莉奈
医員 久田 莉奈
専門分野
  • 腎臓内科
専門医認定/資格等
  • 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
医員 星本 相法
医員 星本 相法
専門分野
  • 腎臓内科
専門医認定/資格等
  • 日本内科学会認定内科医
医員 村田 莉里子
医員 村田 莉里子

当院での専門的治療

IgA(アイジーエイ)腎症
IgA腎症とは?

これは慢性糸球体腎炎の一つの原因で日本人に多いことで知られています。 これにかかった30%ぐらいの人がもし無治療で放置すると腎臓の働きが廃絶し透析療法や腎移植を受けないと生きていけなくなります。 原因は子供の時から成人にかけて扁桃炎を繰り返したり腸炎を繰り返したりするとIgA(アイジーエイ)という腸管で免疫を司るタンパク質(グロブリン)に 変化が起きることにあります。そしてこの変化したIgAが腎臓の糸球体という尿をこす器官に張り付いてそれを壊していくことになります。 一方で、放置しておいても腎臓が悪くならない軽症の患者さんも少なくありません。

IgA腎症の症状とは?

IgA腎症の特徴は血尿です。通常は目で見えないほどの潜血ですが、発熱したりすると目でもわかり尿が紅茶色に濃くなることがあります。

どんな人で腎臓が悪くなる?

ではどのようなIgA腎症の方で腎臓が悪くなるのでしょう?2つのことがわかっています。 一つは、尿にタンパクも出ている人です。しかもそれが1日1g以上出ていると悪くなる危険性が高いと考えられます。 第2に、すでに腎機能の低下が見られる方です。これはeGFRという腎機能の指標で60 mL/分以下になっていることで分かります。

治療方針を決めるには腎生検が必須

尿潜血だけでなく、尿タンパクも出ている場合は腎生検による病理検査をお勧めします。 尿タンパクの量は1日1g以上なら勿論ですが、その他の検査結果も考慮して0.5g以上でも腎生検をした方が良い場合もあります。

当院での治療方針

まず、尿タンパク量が1g以下で腎生検でも軽度の病変だった場合は、もし血圧が130/80mmHg以上あればレニンアンギオテンシン系阻害薬という種類の血圧降下薬を服用します。 これには糸球体の病変を悪化させない効果が認められています。もし血圧が低い場合は、これに変わる治療法はなく経過を観察し、進行するようなら次のステロイドによる治療法を始めます。 中等症〜重症の場合:尿タンパク量が1g以下で腎生検の結果、明らかに病変が進んでいいて予後が悪くなる予想がある場合はステロイド療法を行います。 扁桃炎を繰り返した歴史がある場合は、ステロイド療法に先立って扁桃腺の摘出を耳鼻科で行います。かなり効果的な治療法です。

当院でのステロイド療法

日本では大きく2種類の方法で行われていますが、当院では国際ガイドラインにのっとりステロイドの副作用を最大限少なくし、入院期間が少なくてすむ方法を採用しています。 早期にこの治療を行えば治療後6ヶ月以内に尿タンパクが消え、血尿も消える場合が多い治療法です。次の順番で行います。
①扁桃腺の摘出(しない場合もあります):当院または他院の耳鼻科にて入院(通常1〜2週間)
②ステロイドパルス療法(入院):メチルプレドニゾロン1gを点滴で1日1回、3日間行います。これを8週間間隔で3回行います。入院は各3日間のみです。
③パルス療法の間は外来にてプレドニン30mgを隔日で服用します。これを3回目パルス療法終了後8週間継続します。
④トータル24週間の後、次第にプレドニンを減量し8週後に中止します。

ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群とは?

尿にタンパクが大量(1日3g以上)に出て体全体が浮腫む腎臓病を総称してネフローゼ症候群とよびます。 その原因は一つではなく色々な原因があります。いずれも腎臓の糸球体という血液をろ過して尿を作る部分の異常で、 正常では尿に濾し出されないはずのタンパク質が尿に漏れてしまう病気です。

その原因は?

糖尿病や糸球体腎炎が原因としてほとんどです。糸球体腎炎の中で一番多いのが、微小変化型ネフローゼと呼ばれる糸球体腎炎で、 子供や若い人がかかり(高齢者でも時になりますが)、急に顔や足がむくみ放っておくと肺にまで水が溜まって危険な状態になる病気です。 ただしこのタイプは症状は派手ですが治療(ステロイド療法)がとてもよく効きますし、腎機能が通常悪くなることはありません。 次に、巣状糸球体硬化症と言って、実は先の微小変化型と似た様な発病の仕方をしますが、ステロイドが効かなかったり、すぐに再発をしたりして、 次第に腎機能が低下してしまう厄介な病気です。3番目は膜性腎症といって、前2者の様にたくさん蛋白尿は出ないのですが、半数くらいが腎臓の働きが低下してしまう病気です。 この3番目が厄介なのは腎臓以外の他の臓器の病気によって引き起こされることがある点で、代表的な原因に悪性腫瘍があります。このため悪性腫瘍のスクリーニングをすることが大事です。 ネフローゼにはこれら以外にも薬剤が原因でなる場合もあります。

治療方針を決めるには腎生検が必須

こうした原因を診断し治療方針を決めるには腎生検のよる病理検査が必須です。(「当院における腎生検について」を参照)

当院での治療方針

国際ガイドライン(KDIGO)に沿った治療を行います。糖尿病が原因の場合は、特にSGLT2阻害薬という種類の血糖降下薬で血糖コントロールを行うこと、 レニンアンギオテンシン系阻害薬という種類の血圧降下薬を服用します。食事療法、運動療法がとりわけ重要です。 糸球体腎炎が原因の場合、全てのタイプで治療の基本はまず高容量のステロイド療法です。 最初にステロイドパルス療法(3日間に亘って連日1gのメチルプレドニゾロンを点滴する治療法)を行う場合と行わない場合があります。 次に体重1kgあたり0.6〜1mg(体重50kgなら30〜50mg)、最高で60mgのプレドニンを連日内服していただきます。 これを1ヶ月程度行い尿タンパクがマイナスになったら5〜10mgずつ減量していきます。30mg以下になるまでは入院が必要です。 最低12ヶ月間はステロイドを服用します。微小変化型は10年間で平均3回は再発するので根気強い治療が必要です。 こうしたステロイドだけでは尿タンパクが減らない場合にそのほかの免疫を抑制する薬剤を使用します。 当院ではシクロスポリンやシクロホスファミドを使用しますが、ステロイドよりも免疫を抑える力が強いので、ウイルスや真菌などに感染するリスクがより多くなります。 いずれにしろ、薬剤の効果と副作用を熟知している私どもの様な病院での治療が必須です。

急速進行性糸球体腎炎およびSLE腎症
急速進行性糸球体腎炎とは?

通常の慢性糸球体腎炎は年単位で進行して腎臓が悪くなっていきます。また全く進行しない良性なものも少なくありません。 ところが数ヶ月から数週間単位で腎臓の働きが失われていく急速に進行する重症な糸球体腎炎があります。こうした重症例を総称して急速進行性糸球体腎炎と呼びます。

その原因は?

原因は免疫の異常です。その異常には多くの種類がありますが、通常私たちが診る機会が最も多いのがANCA(アンカ)関連腎炎です。 これはそもそも細菌などから自分を守る白血球の中の好中球に対する自己抗体(これをANCAと呼ぶ)を作ってしまう病気で、高齢者に多いのが特徴です。 尿中に白血球が出るために腎盂腎炎と誤診されることが多く急速に腎機能が低下してしまう病気です。 他にはSLE(エスエルイー)という代表的な自己免疫異常があり、これは逆に若年者の方が多い病気です。 いずれも、ほかの慢性糸球体腎炎と異なり悪くなるのは腎臓だけでなく、肺、関節、脳、心臓など他の臓器も悪くなることが多い病気です。 このため、生命を救うには強力な治療法が必要になってきます。

治療方針を決めるのには腎生検が必要

ANCAやSLEは血液検査で診断が可能です。ただ、本当にその為に腎臓が悪くなっているか、そしてどの程度重症かを確かめるには、やはり腎生検が必要です。

当院での治療方針

国際ガイドライン(KDIGO)に沿った治療を行います。ネフローゼ症候群と同じ様にステロイド療法が基本です。 3日間のステロイドパルス療法に続き、体重あたり1mg程度の高容量ステロイドの連日内服を行います。 また、病変が多臓器に渡る場合には、血漿を交換して異常な抗体を取り除く治療法やその他の免疫抑制薬、特にシクロホスファミドを併用します。 またSLEの場合は最も生命への影響が懸念されるので、シクロホスファミド、ヒドロキシクロロキン、タクロリムス、ミコフェノール酸 モフェチル(MMF)などの 新しく強力な免疫抑制剤の使用が認められています。これらの治療の最初は通常1〜2ヶ月間の入院治療が必要です。 常にその病気の生命に与える危険性と治療に伴う副作用の危険性を計りながら細心の注意を払って治療する必要があります。

慢性腎臓病(CKD)
慢性腎臓病とは?

慢性腎臓病とはCKDという略称でも知られていますが、成人の10人に一人がかかっている病気です。 3ヶ月以上慢性に続く腎臓病の総称で、多くの原因がありますが、多いのは糖尿病、慢性糸球体腎炎、腎硬化症(高血圧性腎症とも呼ぶ)です。 検診で尿検査に異常があったり、腎機能の指標であるeGFRが60 ml/分未満だったりするとこのように診断されます。

eGFR 60 mL/分未満は必ず異常?

いえ、そうとは言えません。このeGFRが60未満というのは腎臓の働きが60%未満ということですが、 血液中のクレアチニン値から計算で出したものであくまで同じ年齢、性別の人の間の平均値です。 このため、実際には腎機能が落ちていなくてもそのように表してしまっていることも無きにしも非ずということです。 大事なのは、尿検査でタンパク尿や潜血が出ていないか?超音波検査やCT検査で腎臓の形に異常がないか?を調べることです。 こうした異常がなく、糖尿病、高血圧、高脂血症、高尿酸血症(または痛風)がなければまず心配いりません。逆にこうした異常があれば心配する必要があります。

慢性腎臓病はなぜ怖いか?

第一に次第に腎臓が悪くなって末期腎不全、すなわち透析が必要になってしまう人がいます。 もう一つは、心筋梗塞や脳卒中の原因にもなるからです。また、腎機能が低下してくると用量を調節したり、副作用が出やすくなったりする薬剤がありますし、 造影剤や鎮痛薬の類はさらに腎機能にダメージを与える危険が大きくなります。

当院での慢性腎臓病の診療
慢性腎臓病の疑いがある場合は、軽症であってもまず当科で本当に慢性腎臓病なのか、そしてその原因となる病気が隠れていないかを診断いたします。 まれな免疫異常や血液疾患なども調べます。その結果、腎機能の低下があまり見られず、高血圧や高脂血症、高尿酸血症が原因である場合は、 かかりつけ医にお願いしてこれらの治療をしていただきます。eGFRが30 mL/分以下のステージG4以降、尿タンパクが1g以上出ている場合、 糖尿病でネフローゼになってしまっている場合、免疫抑制療法が必要な場合、そして多発性嚢胞腎などの難病では当科で引き続き専門的に診療いたします。

慢性腎臓病の進行にブレーキをかけるには?

第一に、食事療法です。eGFR 30 mL/分以上(ステージG3a/b)では、動物性タンパク質を取り過ぎないこと、塩分を制限することにつきます。 eGFR 30 mL/分以下になるとタンパク質を体重あたり0.6〜0.8g以下に制限します。 また血液中のカリウム(K)値が5.0 mEq/Lを超えるようならカリウムの多い生野菜、果物、乳製品を制限する必要が出てきます。 当院の管理栄養士はこうした食事指導に長けていますので、定期的に栄養指導を受けていただきます。薬物療法では、原因の治療以外にはレニンアンギオテンシン系阻害薬という 降圧薬の服用です。これは血圧を正常化するだけでなく、腎臓の負担を取り除いて悪化することを防いでくれます。大事な腎臓の薬です。

CKD教育入院

当院では4日〜7日のCKD教育入院を実施しています。この入院で食事療法を体感していただくのが主な目的ですが、ご自身の腎臓病についての知識を深め療養に役立てていただきます。 また近い将来透析療法が必要な方にはアクセスの作成、透析療法の見学、公費補助制度の理解など透析への準備をしていただきます。

血液透析の開始
血液透析とは?

腎臓の働きが低下しすぎると生命の維持ができなくなる為に何らかの腎臓に替わる治療が必要になります。 それには血液透析、腹膜透析、腎移植の3つがあります。日本では毎年これらの治療を開始する人は3万人程度で、そのうち97%の方が血液透析で治療を受けています。 一方で腹膜透析は3%弱、腎臓移植は年間で2,000名弱です。血液透析は週に3回(月水金または火木土)、1回4〜5時間受けなければならない治療法です。 これは血管に針を刺して血液を体外に出して、血液浄化器で血液を綺麗にして体に返す作業です。一方、腹膜透析は腹腔にカテーテルを挿入して透析液を血管でなく お腹の中に入れて腹膜を使って透析する方法です。家において自分で操作しますので病院への通院が少なくて済む利点があります。 この腹膜透析は当院でも行える技術力はあるのですが現在0名となっています。

いつ血液透析を始めますか?

腎臓の働きは血液中のクレアチニン値とそれから計算されるeGFR値で判断できます。クレアチニン値が8 mg/dL以上、またはeGFRが6 ml/分以下になれば、 尿がたとえ出ていたとしても透析の開始が必要になります。ただし、それ以前でも浮腫みが取れなかったり、心不全になったり、 カリウム値が高かったりすると透析を開始することがあります。

透析を始めないとどうなりますか?

透析を始めないと尿毒症になります。心不全を起こして息ができなくなったり、吐いたりして、次第に意識がなくなり錯乱状態になります。 カリウム値が高くなり致命的な不整脈が起こります。当院ではこうした症状が出る前に透析を始めていただくようお願いしています。 尿毒症はそのままでは致死的な病状です。当院では24時間体制で緊急に透析を行えますが、たとえ救命しても心臓や脳に後遺症が残ることが多いので、 ギリギリまで引き延ばすのには賛成できません。

血液透析を行うにはアクセス手術が必要

血液透析は血液を体外に一旦出して、再度返す必要があります。このため太い血管が必要なので血管アクセスを確保します。 この為通常行われるのが内シャント造設術で、前腕の静脈と動脈を2時間程度の局所麻酔の手術で繋ぐことを行います。ただこの手術をしても最低2週間は使用することができません。 この為、すぐに透析を始めなければならない場合はカテーテルを頸にある血管から挿入することを行います。このカテーテルの最大の問題は感染を起こしやすいことで、 かつ感染すると血液に細菌が回ってしまう敗血症になる危険があることです。ですから、なるべく早いうちに内シャントを作っておく必要があります。 この手術は日帰りか1泊程度で行えます。この内シャントが完成していれば、透析を始めるとき1週間程度の入院で住むことになります。

血液透析の費用は?

血液透析を1回行うと3万円弱の費用が発生します。保険3割負担だと月10万円の自己負担になってしまいます。 でも日本では早くから公費(健康保険ではなくぜい金)によって負担され、所得が高い人で月2万円まで、通常の所得の方は月1万円以内の自己負担で透析が受けられます。 身体障害者1級手帳が交付されます。

透析を行うための外来通院は?

当院でも外来通院による透析が可能です。ただ、手足が不自由になって通えない方には送迎サービスが必要なので、 当院付属施設のアイタワー透析クリニックはじめとしてIMSグループの大和病院、高島平中央総合病院、IMS記念病院やその他通院に便利な透析施設を紹介します。 また日中働いている方には夜間透析のできる透析施設を紹介します。

透析をしないで寿命を全うしたい方は?

透析も人工呼吸器と同様に生命維持装置です。これを施行するにはご本人の同意が必要です。ご本人が認知症などのために判断能力がない場合は家族の方に判断していただきます。 高齢で透析をしてもしなくても残された寿命がそれほど違わないと考えられる場合、ご本人の意思がはっきりして入れば透析を行わない終末期の医療も私たちは理解します。 この場合はあくまでも本人の意思がはっきりしている場合に限ります。この様な選択をされる方には、訪問診療の導入による在宅医療や療養型または地域包括医療型などお看取りを していただける施設へのご紹介をいたします。先に述べた様な尿毒症による苦痛を減らすように努めます。

多発性嚢胞腎(ADPKD)
多発性のう胞腎とは?

これは腎臓病としては最も多い遺伝病で常染色体優性遺伝という遺伝形式、すなわち子供二人産むと一人には遺伝する確率を示します。 これが遺伝するとその3割ぐらいの人が60歳ぐらいまでには末期腎不全になると思われます。すなわち慢性腎臓病の原因の一つでもあります。 この病気は身体中の細い管が膨らむのが特徴で、腎臓のほか肝臓、膵臓、肺、総胆管などにのう胞を作る他、大腸憩室、脳動脈瘤を作ることがあります。 いずれも良性のものですが、腎臓だけがのう胞が大きくなると正常な組織を圧迫してその機能が失われていくことになります。 最近、トルバプタンという薬がその進行にブレーキをかけることができるので投薬されるようになっています。

当院での診療

まず家系に腎臓病やくも膜下出血(脳動脈瘤の破裂の疑い)の人がいる場合この病気を疑います。診断は子供の頃からわかることもありますが、 ほかの遺伝病のように重篤な障害を起こさないので超音波検査をしないとわからないことがほとんどです。成人になると画像検査でわかりやすくなります。 ただしこの病気を見たことのない医師は多く、診断には専門性が必要なので当院のような経験豊富な施設で行う必要があります。 担当する科は当院では腎臓内科が主に行いますが、泌尿器科でも診断は可能ですが、多臓器に及ぶ病気なので腎臓内科での診療が好ましいと思われます。 また合併症の中では最も死亡率の高い脳動脈瘤を早期に発見することが大事です。この診断が疑われた場合には必ず脳のMRA検査を行って動脈瘤の有無を調べます。 もしあった場合、直径5mm以上ですと破裂する危険が高いということになり、脳神経外科へ依頼をします。見つからなかった場合も5年毎には調べたほうが良いでしょう。

難病指定病院である当院でのトルバプタン治療

1年間に腎容積が5%以上大きくなる人は腎機能が低下していく危険性が大きいと考えられます。 このためトルバプタン(商品名サムスカTM)という抗利尿ホルモンをシャットアウトする薬剤の適応になります。 開始する時期はこの条件を満たしていれば早いほど良いということになります。一方で、eGFRが30 mL/分以下では効き目は減少してしまいます。 そしてこの薬剤は大変高価なので、これを服用するにはH26年に施行された新「難病医療法」の認定を受けて費用援助を受ける必要があります。 この薬剤は尿を限りなく薄くする薬でこのため1日5Lもの排尿をすることになります。これは結構大変なことですが、ほとんどの患者さんはこれに耐えて頑張って服用されています。 まず1泊2日の入院をしてこの薬剤のことと尿の出方を確認して、正しく飲水することを学びます。 副作用としては多尿(これは効果ですが)のほか、適切に飲水をしないと血液中のナトリウム濃度が高くなり危険です。 また肝障害も報告されているので、4週毎の検査と全例の厚労省へのデータ報告が義務付けられています。難病指定医でないとこの処方はできません。

腎臓移植

当院では東京女子医科大学腎臓外科のサポートを受けて腎移植を行ってきました。現在行っているのは夫婦間や親子間による生体腎移植です。 受けられるのは6親等以内の近親者のみですが、その内でも金銭授受など利益相反が生まれる場合は行いません。 移植の成否はドナーの臓器とレシピエントの臓器がどれだけ相性がよいか(適合性という)で決定されます。この相性を調べる検査を組織適合性検査といいます。 これにはHLA抗原の同定とリンパ球のクロスマッチが基本となり、採血で行うことが出来ます。今ではこれらの検査により移植後の拒絶反応がほぼ予測可能となりつつあります。 もちろんクロスマッチが陰性であればほぼ問題ありませんが、クロスマッチが陽性(相性が悪い)の場合であっても、現在では減感作療法という方法により腎移植が可能となりつつあります。 血液型が合わなくても問題なく行えるようになって夫婦間の移植が増えています。腎移植に伴う危険性としては、拒絶反応を防ぐために使う免疫抑制剤によるものがほとんどです。 最近ではこの予防法も確率しており、その他持病の心臓病なども含んで1年間の死亡率は1.6%と低く抑えられています。一方、腎臓を提供するドナーの側の危険性ですが、 本邦では腎移植手術に伴う死亡例の報告はありません。長期的にもっとも問題となるのは慢性腎臓病の発症でしょう。腎臓が一つだと負担がかかり慢性腎臓病になる場合があります。 特にメタボ、糖尿病、喫煙、高血圧などがあるときはその危険性が高くなるのでこれらの改善に尽くすべきでしょう。そして定期的な健康チェック、特に血圧と尿検査が必要です。 さて移植に関わる費用ですが、レシピエント(受ける人)の負担は透析と同様に公費でまかなわれ、ドナーの入院費はレシピエントの公費で払われるので大きな支払いはありません。 移植希望のある方は腎移植外来を受診してください。

高血圧の原因診断

高血圧の原因には本態性高血圧といって血圧以外には異常が見つからない場合と二次性高血圧と言って治療できる明らかな原因がある場合があります。 当院では腎臓内科がこの二次性高血圧の原因精査を行います。二次性高血圧の代表的な原因はアルドステロン症と言って、副腎という腎臓のすぐ上にあるホルモンを出す臓器から 血圧を上昇させるアルドステロン(鉱質ステロイドの一つ)が異常に分泌される病気です。この原因には副腎の腫瘍(通常は良性だが、悪性のこともある)の場合と腎臓に行く動脈が 細くなって起きる腎血管性高血圧があります。その他、同じ副腎でも糖質ステロイド(所謂ステロイド)が沢山出るクッシング病、カテコラミンが発作的に分泌される褐色細胞腫などの 原因があります。また慢性糸球体腎炎や多発性嚢胞腎に伴って起きるものを腎性高血圧と呼びます。そして最近注目されているのが睡眠時無呼吸症候群(SAS)による高血圧です。 当院では呼吸器外科にその専門外来があり併診して治療に当たります。いずれも原因によって使用する降圧薬の種類がかわりますし、腫瘍の場合はその摘出が必要になることもあります。 こうした二次性高血圧の原因を当科は精査します。特にアルドステロン症が疑われる場合は外来でのスクリーニングの後に3日間の入院での確定検査が必要になります。 精査の結果に基づいて治療法を確定し、その後の血圧のコントロールはかかりつけの内科医にお願いすることになります。

水電解質の異常

血液中のナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、リン(P)の濃度が異常に増加したり低下したりする原因を精査し治療することも当科の得意な分野です。

血清ナトリウム異常

低ナトリウム血症は特に高齢者で多く、120 mEq/L以下になると脳浮腫によって意識が混濁し、さらに昏睡や痙攣を起こすことになります。 原因にはADH分泌不適合症候群やナトリウム喪失性腎症などがあります。その治療は原因によって異なり、間違えると帰って危険な結果となります。 急速な補正は危険な浸透圧性神経脱髄症候群を起こします。逆に高ナトリウム血症は160 mE/L以上になると脳が脱水を起こし昏睡、痙攣を起こします。 原因としては尿崩症という尿を濃縮できなくなる病気がありますが、喉の渇きに応じて飲水ができる人ではNa濃度の上昇は起きません。

血清カリウム異常症

Kの値は低すぎても高すぎても危険な不整脈を引き起こします。また低いと筋肉が麻痺します。高K血症は腎臓機能の低下に伴って起きることが多く、 逆に低カリウム血症は利尿薬の副作用やアルコール多飲で起きることが多いのです。また尿細管性アシドーシスという遺伝病が隠れている場合もあります。

血清カルシウム・リン異常症

Caとリンは共に副甲状腺ホルモンやビタミンDによって調節を受け、共にヒドロキシアパタイトを形成して骨を形成します。 Caは細胞内の信号伝達を司り、リンはATPとして細胞活動、特に筋細胞の収縮のためのエネルギーとなります。それぞれ副甲状腺ホルモンの過剰分泌や欠乏、 ビタミンDの欠乏や過剰(薬剤およびサルコイドーシス)、そして悪性腫瘍による骨融解によっておきます。こうした異常は骨折の原因となるだけでなく、 高カルシウム血症は多尿や急性腎障害を起こし、認知症のような症状やひどいと痙攣昏睡を引き起こします。ちなみに副甲状腺の腫瘍である原発性副甲状腺機能亢進症は 隠れた高血圧の原因となっていることがあります。当科は内分泌内科ではありませんが、この分野を得意としています。

浮腫(むくみ)
浮腫の原因は腎臓病?

浮腫というと腎臓内科を思い浮かべる人は多いと思いますが、実は浮腫の原因は必ずしも腎臓病に限りません。 腎臓病でむくむのはネフローゼ症候群と言って尿から1日3g以上大量にタンパクが漏れている場合、腎機能が低下して十分に尿が出なくなった場合で、CKDというだけではむくみません。 急性糸球体腎炎ではまぶたや顔がむくみます。

全身に起きる浮腫の原因

全身に起きる浮腫は四肢の末梢から血液が十分に心臓に還らず、毛細血管に滞留して血管外に漏れる水分量が多いために起きるのが原因です。 その理由として腎臓で尿にタンパクが大量に漏れる(ネフローゼ症候群)ことで血液中のアルブミンが減少してしまうことがあります。 同様の原因は肝硬変でアルブミンが作られないことで起き、四肢の浮腫だけでなく腹水や胸水も溜まることになります。 心不全ではポンプの働きが弱まるために血液を心臓に戻す力が弱まりむくんだり胸水が溜まったりします。労作時の息苦しさが特徴的です。 これらに異常がなく全身がむくむ場合として甲状腺機能低下症がありますが、押して指の跡が残らない浮腫が特徴です。

下肢など一部が浮腫む原因

まず静脈に血液が鬱滞するために起きる浮腫で、寝て朝になると良くなっている浮腫です。この原因には下肢静脈血栓症や下肢静脈不全症があります。 座りっぱなしや立ちっぱなしでいる時間が多い人になり、血液中のD-dimerという濃度が上昇していればこれらを疑います。当院ではフットケアー外来を受診してもらいます。 治療は弾性ストッキングと抗凝固薬です。注意しないとこれは肺塞栓、すなわちエコノミークラス症候群の原因となります。 また下大静脈が癌などで圧されてむくむ下大静脈症候群という深刻な病気もあります。この場合は寝ても改善しません。

リンパ浮腫

これはリンパの流れが途絶するために起きるむくみで、先天性の病気もありますが多いのが乳がんの手術後などに起きる二次性のリンパ浮腫です。 フィラリアという原虫が感染するとリンパ浮腫がおき、皮膚も硬く変色して象の足のようになります。リンパ浮腫ではその部分の皮膚が白くなる特徴があります。

腫れと浮腫の違い

浮腫では皮膚は赤くなりませんし、痛くもありません。もしそういう症状があれば炎症による腫れ(腫脹)です。細菌感染による蜂窩織炎が疑われ抗菌薬の投与が必要です。 リンパ浮腫では蜂窩織炎を合併することもあり、白い表面であったのが赤く炎症を起こします。

薬剤性の浮腫、腫脹

アスピリンなどの消炎鎮痛薬、降圧薬(カルシウム拮抗薬やアンギオテンシン変換酵素阻害薬など)、ペニシリン、経口避妊薬、線溶系酵素 (血栓を溶かす薬)などがあります。 服用していて次第にひどくなる場合もありますが、アスピリンのように服用直後から急に浮腫というよりは瞼や喉が腫れて呼吸困難になることもあります。

特発性浮腫

以上のどれにも当てはまらない原因を特発性浮腫と診断します。1日に浮腫のために1.5Kg以上の体重変動があるような浮腫で、立位で増悪、臥位で軽減することが特徴です。 浮腫の機序は立位での毛細血管からの血漿成分の過度の漏出ですが、その原因はよくわかっていません。15歳〜50歳ぐらいの女性に多い病気です。 四肢がむくんだり腸管浮腫でお腹が張りますが、頸静脈は怒張しませんし胸水も貯まりません。数日間ひどくなり頂点に達すると下痢が始まって良くなる、という人もいます。 精神的な要素がかなり影響しているように思われ、共通な精神的傾向が見られます。月経不順を伴うことが多く、視床下部からのプロラクチンや女性ホルモンの分泌不全も報告されています。 問題は浮腫を必要以上に嫌う場合が多いことで、中にはフロセミド利尿薬を多用することで血液中のカリウムが減少して筋肉が麻痺する偽バーター症候群になったり、 神経性食指不振症になったりする場合があり、こちらの方が問題です。効果的な治療はありませんが、この浮腫によって生命に危険はないことを十分に理解してもらい、利尿薬、 特にフロセミド依存から離脱させることです。

当院でのステロイド、その他の免疫抑制療法の使用法
免疫抑制療法とは?

進行していく腎臓病を治療する最大の武器はステロイドをはじめとした免疫抑制療法です。多くの進行する腎臓病は免疫の異常により起こります。 このためその異常な免疫を抑えることが治療の基本になります。その適応になる病気には、ネフローゼ症候群(糖尿病以外)、IgA腎症、急速進行性糸球体腎炎、SLE腎症などがあります。 免疫抑制療法として第一に用いられるのがステロイドです。 さらに強力な治療が必要な場合に、シクロスポリン、シクロホスファミド、タクロリムス、ミコフェノール酸 モフェチル(MMF)、リツキシマブと言った薬剤の他に直接異常な抗体を 取り除く血漿交換療法を当院では行います。

免疫抑制療法の副作用の考え方

こうした免疫抑制療法は多くが半年以上の長期間にわたり行う必要があります。このため種々の副作用が想定され、場合によってはそのために命をなくす結果になってしまいます。 従って、その使用にあたっては最大限の予防策を講じることと、病気自身の生命への危険性とを天秤にかけて治療の強度を決める必要があります。 治療しなくても悪くなるのは腎臓だけならば透析をすることで生きながらえることはできるので強い副作用のある薬剤は避けます。 一方で、腎臓だけでなく肺や心臓、脳などが同時に侵される病気では多少の副作用は覚悟して強力な治療をしないといけません。 このさじ加減は時に困難で経験豊富な腎臓内科でないとできません。

ステロイド療法の副作用とその防止策

ステロイドは以下のような副作用が起こりうる薬です。ただ以下の予防策によりニキビや顔が丸くなること以外は完全にシャットアウトすることが可能です。 なお妊娠中でも服用できるのはステロイドのみです。
①ウイルスや細菌などによる感染に弱くなります。特にニューモシスチス肺炎やサイトメガロ感染症は危険なため、バクター™という抗菌薬を予防的に服用します。 サイトメガロウイルスは定期的に血液検査でモニターします。
②血糖値が上昇することがあります。糖尿病の人はそれが悪化しますし、そうでない人でも一時的な糖尿病になる場合があります。 定期的に血糖値をチェックして必要なら血糖降下薬を服用します。
③骨粗鬆症になる場合があります。このため週1回ボナロン™という効果が確かめられている骨粗鬆症治療薬を予防的に服用します。
④胃潰瘍や十二指腸潰瘍になりやすくなります。このため、ステロイド内服前に胃カメラを受けていただきます。そして胃潰瘍を予防する薬を飲んでいただきます。
⑤ニキビ、顔が丸くなる。特に若い人が悩まされる副作用です。しっかり洗顔していただくことが大事です。顔が丸くなるのを満月様顔貌(ムーンフェイス)と呼びます。 いずれもステロイドが中止されれば元に戻ります。
⑥大腿骨頭の壊死。ひどいと人工関節に変えなければならなくなります。しかし最近ではほとんど見なくなりました。 ステロイドをなるべく短く投与することや、ステロイド服用中は股関節に負担をかけない、などの予防策が功をそうしているようです。
⑦ステロイド精神病。精神的に不安になったり、うつになったりする場合があります。もともとそういう要素がある患者には発症することがありますが、 このくらいのステロイドの量では通常は起きることは多くありません。ただしステロイド投与直後は眠れなかったりする場合があります。
⑧副腎の働きが弱まる。ステロイドは副腎で作られ体の調節を行う重要なホルモンです。これを服用するとその副腎での生産が落ちます。 このために、急にステロイドを中止してはいけません。次第に投与量を減量することで副腎のステロイド生産を復活させる必要があります。

シクロスポリン、タクロリムスの副作用とその予防

この薬剤はいずれもカルシニューリン阻害薬と呼ばれる種類で、シクロスポリンはネフローゼ症候群に併用することが多い薬剤です。 タクロリムスはSLE腎症か腎移植に用いられるスタンダードな薬剤です。いずれもステロイドよりも副作用はむしろ少ないのですが、 量が多すぎると逆に腎臓を悪くしてしまうことが問題です。このために、血中の薬剤濃度を定期的に測定してこれを予防します。

シクロホスファミド

これは副作用が多いのですが長く使われている強力な治療薬です。代表的な副作用は骨髄抑制で好中球や血小板を減少させてしまいます。 また、大量に使用すると出血性膀胱炎を起こす他、悪性腫瘍が将来起きる危険性を高めると考えています。このため常に血液検査でモニターしながら点滴で2週間から4週間毎に投与し、 出血性膀胱炎を防ぐ薬を同時に投与します。癌の予防はできませんが、定期的ながん検診を行います。

ミコフェノール酸 モフェチル(MMF)

この薬剤は高価で日本ではSLE腎症と腎移植以外には保険が適応されません。海外ではネフローゼ症候群にも効果が確かめられているので残念です。 催奇形性があるので妊婦、その可能性のある女性には禁忌です。好中球減少症や悪性腫瘍の危険性があります。

リツキシマブ

最も新しく大変効果が期待される薬剤ですが、高価でANCA関連腎炎の内のウェゲナー肉芽種、小児期に発症した難治性ネフローゼ症候群、 そして腎移植のみに現在適応が認められています。副作用としては特に初回投与時にアナフィラキシー様症状に注意することと、汎血球減少、 将来の悪性腫瘍リスクの増加もありますが比較的副作用が少ない(少なくともシクロホスファミドより)と考えられています。

血漿交換療法

血液透析と同じ様な操作で血漿を分離し新鮮血漿やアルブミンで補充する方法で、抗凝固剤を使用するのでそれによる出血傾向やカテーテル挿入に伴う出血や感染などぐらいで 安全な免疫抑制療法です。ただし高価なのでこれが保険適応で行える病気はやはり限られています。当院の得意分野の一つです。

当院における腎生検について

腎臓病の正確な診断と病気の予後を予測し、ステロイドや免疫抑制療法を行うか判断するには腎生検による病理検査が必須です。 慢性糸球体腎炎と一言で言ってもIgA腎症だけでなく多くの種類があります。ざっと言っても膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、半月体形成性腎炎とあります。 当院では針生検と言って背中から腎臓にボールペンの針ぐらいの太さの針(専用のディスポ製)を刺して組織を採ります。これを超音波で腎臓や針先を見ながら安全に行います。 所要時間は準備も含めて30分程度です。腎臓を針で刺しますと必ず出血しますので止血を十分にすることが大事です。このため砂嚢を夕方まで押し当てその後も翌朝8時ごろまで ベッドの上で仰向けに絶対安静を取ります。排尿はカテーテルを膀胱に入れて行います。検査そのものは局所麻酔で行いほとんど痛くないのですが、 この検査後の絶対安静を皆さん辛いと言われます。安全のために入院でなければできない検査で、通常は木曜午後2時に入院し、翌日金曜の昼頃に検査、翌朝まで絶対安静、 その後安静を保って月曜から火曜日に退院となります。入院費用は3割負担なら8~9万円程度です。採取した病理組織は光学顕微鏡の他、蛍光抗体染色、電子顕微鏡によって精査します。 通常2週間程度で蛍光抗体染色までの結果が出るので外来でご説明することになります。

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